物質理工学院 応用化学系 学士課程4年※インタビュー内容は2020年9月時点のものです。
東工大を目指すことになったきっかけ
高校3年生からはじまった有機化学がそれまでの化学とは全く別の新しい分野だと感じ、特に僕は構造決定に興味を惹かれました。YES/NOで答えられるようなクローズドクエスチョンを続けていって、物質の化学構造を決定するというのがゲーム感覚で面白かった。唯一勉強をやっていて楽しい、一生続けていられると思ったんです。
そうして魅了された化学を勉強できるところに行きたいと考えました。周りに化学の濃い話ができる友達がおらず、理工系の空気に触れて誰かと熱く語れるような大学を探して、一番いいと感じた東工大を目指したのがきっかけです。当時は物質理工学院ではなく第3類でしたが、ほかの類は考えませんでした。結局、大学に入ってから高校化学の構造決定の知識は全く使わなくなりましたけど(笑)。
受験勉強時代について
僕は2年浪人をしていて、3回東工大を受験しました。それほど行きたい気持ちが強かったんです。
数学や物理はまだ好きな部類でしたが、英語はとても苦手でした。センター試験の基準点が600点だった(当時)ので、数学や物理などで点数を稼ぐことを考えました。
化学の問題を解いている間はただただ楽しいんです。だから苦手な英語や国語を1時間やって辛くなったら、30分は化学をやってもいいとルールを決めて、自分にご褒美をあげるように勉強していました。そうすると化学がますます好きになっていきましたね。
東工大で今、打ち込んでいること
学部3年までの学生実験では、分析結果とにらめっこして何が起こっているのか考える時間が一番好きでした。実験自体はとても大変ですが、その分得られることも多かったです。
現在は田中克典研究室に所属して、放射性物質を使ったがんの治療薬の合成を行っています。今までなかった独自のアプローチによる研究にやりがいと責任感を持って打ち込んでいます。
田中研究室では生体内で治療薬を合成して体内疾患を治す取り組みをしていて、創薬に近いですね。まだ新しい研究室で、メンバーは学士課程4年の3人。みんな仲が良く雰囲気はすごく明るくて、常に笑いが絶えません。自分の性格にもマッチしていて実家より安心します(笑)。
研究以外では、苔テラリウムを自宅で可愛がっています。小さいガラスの瓶に森をイメージしたような苔が生えていて、水をあげて育てています。昔から小さいものが好きで、小さな世界を覗いてみる好奇心から化学が好きになったのかもしれません。
東工大の物質理工学院に入ってみて
東工大生は理工系という意識が強く、知識も深くて、自信を無くすほどみんな頭がいいですね。でも一緒にいて過ごしやすい人が多く、何かを強要しない距離感が好きで居心地がいいんです。
あと、成績だけでは計れない底力みたいなものを感じます。自分のやっていることは正しいと強い信念を持った人ほどタフに生きていて、見ていてすごいなって思います。
物質理工学院は他の学院より女子率が高く、明るい雰囲気。世の中をよくするものを送り出したいと考えている人が多いです。たとえばポリエチレンテレフタラートという優秀な高分子が開発されたことによって今世界にペットボトルが普及しているように、物質理工学院は研究の成果が人間生活の発展にかなり近い、クリエイティブな領域の化学をやっている印象がありますね。
コロナ禍での過ごし方
学士課程4年になるともう授業は取らないので、基本的に有機化学の教科書を読んで研究に備えていました。研究室に来られない間、週2日くらいのペースで研究室でZoomを使って勉強会をしていましたね。研究室のメンバー同士の顔合わせもZoom越しでした。6月中旬から研究室に週2回来られるようになり、現在は自分の研究に取り組んでいます。
今後の目標や将来の夢について
田中先生の研究室は理化学研究所にもあり、そこと平行して進めている今の研究は創薬に近い社会実装研究とも言えます。僕は9月に学士課程を早期卒業し、10月から修士課程に進んで理化学研究所にも訪れる予定です。
今の研究室がとても楽しくて、博士後期課程に進むことも視野に入れるようになりました。就職はあまり考えていなくて、今後も自分の研究を突き詰めていきたいと思っています。
One Day of a Tokyo Tech Student
通学しているときの過ごし方
8:00
起床、朝食など
8:30
登校
9:00
授業
12:15
昼食
お昼ご飯は学生食堂で食べています。
13:20
学生実験
17:00
部活動
19:00
アルバイト
大岡山で家庭教師のアルバイトをしています。
21:00
夕食
22:00
自由時間
22:30
授業の復習、課題
23:30
ゲーム
24:00
就寝
オンライン授業のときの過ごし方
8:00
起床、朝食など
8:30
登校
8:50
授業
12:20
昼食
13:00
研究
6月中旬から週2回のペースで研究室に来られるようになり、夜まで籠もっていました。週2回以外は在宅し、完全な休日として過ごしていました。
20:00
下校
20:30
夕食
21:30
自由時間
22:30
家事
23:00
ゲーム
24:00
就寝
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所属しているサークル/部活動は?
東工大ScienceTechno(サイテク)というサークルに所属していて、子どもたちに科学の楽しさを教えるイベントをさまざまな場所に出向いて行っています。趣味の消しゴムハンコ作りが高じて、工大祭スタンプラリーのハンコ製作も担当。部室は心地よく、大学内での「居場所」でした。
また、仲間とファシリテーションを学びたいという話になり、東工大ファシリテーションサークルFacitechを設立し、一年間代表を担当しました。
あとは蔵前工業会の学生分科会に入っていて、学生企画の運営をしていました。 -
一番好きな授業・研究や、印象に残っている授業・研究は?
中野民夫教授の「コミュニケーション論」のゼミを何度も履修し、先生のご厚意から屋久島の別荘へゼミ仲間と旅行にも行きました。
札野順教授の「融合系ゼミ(「Well-being(よく生きること)」の科学と教育)導入」というゼミでは、幸せになるには何が必要かについて講義とディスカッションを重ねて考えを深めます。この授業が大好きで受講し続けました。
有機化学の授業がもちろん楽しいのですが、文系の教養科目も学んでみると意外に面白くて興味深かったです。 -
アルバイトはしていますか?
昔から週末の土日に家庭教師をしていて、研究室に所属した今でも続けています。やはりプライベートの時間は減ってしまいますが、その分とても楽しくやらせていただいています。
Profile
大出雄大(Yudai Ode)
物質理工学院 応用化学系 学士課程4年 埼玉県出身
高校生、受験生に向けて一言!
高校生、受験生に向けて一言!
一つの選択肢として東工大を選んだのなら、最後まで諦めないでほしいと思います。あなたが目を付けた大学は、あなたが思っている以上にいいところだから、妥協せずに目指し続けてほしいです。受験に関しては、勉強と遊びをしっかり分けてメリハリをつけた方がモチベーションも長く続いていいと思いますよ。
本インタビューは東京工業大学のリアルを伝える情報誌「Tech Tech ~テクテク~ 38号(2020年12月)」に掲載されています。広報誌ページから過去に発行されたTech Techをご覧いただけます。
(2020年取材)