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「ヒッグス粒子」発見の、その先へ

大学院理工学研究科基礎物理学専攻 陣内修 准教授

大学院理工学研究科基礎物理学専攻

陣内修 准教授

  • CERN(Conseil Européen pour la Recherche Nucléaire /欧州原子核研究機構)

    1954年にスイスのジュネーブに設立された、世界最大規模の素粒子物理学研究機関。陽子を光速近くまで加速し衝突させることができる、全周27 kmの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での実験によって、世界中の科学者たちが素粒子の様々な理論を検証している。

    スイスとフランスの国境をまたいで設置されているLHC

    スイスとフランスの国境をまたいで設置されているLHC

  • NIM モジュール

    放射線測定をする上で、計測した電気信号を特定の条件のもとに分別・演算するための論理回路を設計する装置。NIMとは国内外・メーカーを問わず互換性を持つ標準規格。原子力研究や、原子核・素粒子実験、宇宙線の測定など様々な用途で使用されている。

2013年、その存在を1960年代に予言した2人の科学者がノーベル物理学賞を受賞したことでも再び注目を集めた「ヒッグス粒子」。多くの素粒子物理学者が、長い間その発見に力を注いできました。なぜなら、17種類ある素粒子の中で最後まで見つからなかったヒッグス粒子の基盤ともいえる「ヒッグス場」は、あらゆる物質の質量の起源─その存在こそが原子や分子から星、銀河にいたるまで、全宇宙の成り立ちの鍵を握っているとされたからです。

ヒッグス粒子は、スイスにあるCERN(欧州原子核研究機構)のLHC(大型ハドロン衝突型加速器)における実験でついに発見され、2012年、研究グループにより発表されました。陣内研究室は、この38ヵ国、約3,000人の研究者が参加する共同研究の一翼を担い、現地で実験データの解析や検証にも携わっています。主な実験の目的は、ほぼ山手線1周分の円周を持つL H Cで陽子を光速の99.999999%まで加速し、陽子同士を衝突させて発生する素粒子や現象の中から、未知のものを見つけ出すことです。衝突点には、巨大検出器アトラスが設置され、デジカメの撮影のように衝突事象を計測するのですが、そのシャッタースピードは約4,000万回/秒にもなります。

ヒッグス粒子が発見された今、陣内研究室のメンバーは、さらなる“未知の素粒子”を探求しています。実は、素粒子分野で確立された「標準模型」と呼ばれる理論も、超高エネルギー下では破綻すると言われています。また標準模型で扱う粒子が担う質量を合計しても、宇宙全体の約5%にしかなりません。そうした不合理を解消する「超対称性理論」という仮説が、私たちの研究対象です。新たな素粒子の発見は、きっと、これまでの宇宙の概念や物理法則を大きく刷新することにもつながるでしょう。

宇宙の誕生、進化という科学における最も根源的な謎に迫れるのが私たちの研究活動の魅力です。世界中の研究者とチームを組み、共同研究を進めて、まだ誰も開けたことのない扉を開くチャンスを掴めるかもしれません。また、広大な未知の領域が広がっている素粒子研究では、若い研究者が一躍脚光を浴びることも十分あり得ます。志を持った学生が東工大に入学してくれることを大いに期待しています。

陣内修

Profile

准教授 陣内修

  • 1972年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。
  • 独立行政法人理化学研究所ポスドク、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構助教などを経て、現職。

(2014年取材)

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