ハンググライダーは、山間地域で上昇気流のエネルギーを利用し、大空を飛ぶスポーツです。パイロットは機体のハーネスに身体を水平に固定し、体重を左右に移動させて進行方向を、ベースバーを両手で押し引きして高度を制御します。ハンググライダーの起源は1880年代、東工大のハンググライダー部はその百年後、1980年代に発足しました。
「自力で丘や山から駆け下りて飛び立ちます。着陸するときは、グライダーの速度をできるだけ落として、走りながら地面に降り立ちます。とにかく楽しいですよ。」と話すのは、部長の安田瑛紀さん(工学部土木・環境工学科3年)です。
東工大のハンググライダー部の部員は、現在15名。練習拠点は東京から北東に100キロ程離れたところに位置する茨城県の足尾山にあります。部員の半数はほぼ毎週末、機材が保管してあるこの練習拠点に向かい、それぞれハンググライダーやパラグライダー(パラシュート状の翼を一連のコードで操作して飛行)の練習をしています。
ハンググライダーはお金がかかるスポーツとして知られていますが、安田さんをはじめとする部員の皆さんは、週末足尾山で練習するときはテントを張りキャンプして宿泊費を抑え、機体は中古品を購入したり卒業時に先輩から後輩へ機体を引き継いだりしてコストを抑えているそうです。
また、ハンググライダーには一般的に危険なイメージがありますが、「それは誇張です」と話すのは部員の竪山瑛人さん(工学部化学工学科2年)。「飛行する際は必ずフルフェイスのヘルメットと保護手袋を装着し、パイロットは自分の機体のメンテナンスを自身で行って安全確保を徹底しています。」
そして、安田さんはこう続けます。「新人部員は機体を完全に自分で操作できるようになるまで、インストラクターが指導します。初心者はまず、小さな丘を使って飛行訓練を始めます。この訓練をパラグライダーの場合は8日から9日間、ハンググライダーの場合はさらにその倍の期間訓練を行った後はじめて足尾山の標高400メートル地点から飛び立つことが許されます。」
Tokyo Institute of Technology Bulletin No. 28 (2012年11月)