イマを創る、先輩がいる — 上田恭太さん
100年後も必要とされる材料を!
株式会社三菱化学科学技術研究センター
白色LEDプロジェクト グループリーダー
上田恭太
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青色LEDの光を受けて美しく輝く蛍光体。
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蛍光体で変換された光が合成され、白色光がつくられる。
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「社会に役立つものを」と協力して研究開発を行う仲間たち。写真は大先輩の送別会。
- 上:青色LEDの光を受けて美しく輝く蛍光体。
- 中:蛍光体で変換された光が合成され、白色光がつくられる。
- 下:「社会に役立つものを」と協力して研究開発を行う仲間たち。写真は大先輩の送別会。
- うえだ・きょうた
- (京都府出身)
- 1990年
- 北海道大学 工学部卒業
- 同年
- 森永乳業入社
- 1994年
- 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 化学環境工学専攻 修士課程修了
- 1995年~
- 東北大学助手、東京工科大学助手などを歴任
- 2005年 株式会社三菱化学科学技術研究センター入社
学生時代から始めた蛍光体の研究は、
発明協会の文部科学大臣発明賞を受賞して結実。
研究で大切なことの多くを東工大大学院で学んだと言います。
組織の力を活かせるところが面白い
—現在の仕事内容を教えてください。
次世代LEDの蛍光体の開発を行っています。照明などに使われるLEDでは青色の光源を蛍光体で白色に変換するなどしているのですが、LEDが急速に普及するなか、より耐久性や発色性、演色性に優れた材料が求められています。
—仕事のやりがいは何ですか?
バックグラウンドの異なる人々が、それぞれの思いをもちながら一つの素材や製品にかかわっていく──。そんなところに面白さを感じています。研究開発には、自分だけの世界を構築して、個人でテーマを追究していくスタイルもあるでしょう。ただ一方で、新たな価値を生み出すには、みんなで知恵を出し合うことも大事。企画や製造、販売などとも連携できることは、企業における研究開発の醍醐味です。
東工大は、自分を磨くのに最適な場所
—東工大大学院ではどのようなことを学びましたか?
結晶化学などに関する知識や技術ももちろんですが、何より大きいのは研究に対する姿勢を教えてもらったこと。「できないと思っているなら、研究なんかやめろ!」という担当教授の言葉は今も決して忘れません。ある実験で壁にぶつかったとき、問題が"解決できない"ことを示すデータを揃えて、報告に行ったんです。そうしたら、強く叱られた。「できると信じて取り組むから、発見があるんだ」と。まさにそのとおりです。予測と違うデータこそ、ポジティブに分析する。データに違和感があれば、説明がつくまで追究する。現在、そうしたことを大切にできているのは学生時代の経験があったからです。
—東工大を目指す学生にメッセージをお願いします。
例えば私が専門としている材料の分野でいえば、自分が開発したものが100年後、200年後の世界でも使われている可能性がある。皆さんにも、そんな夢を持って東工大に入ってほしいと思います。東工大には、わからないことがあっても、知っているふうを装って、後で図書館に調べに行く─。そんな良い意味でのプライドをもった先輩がたくさんいます。自分を磨くには、最適な場所ですよ。
(2012年取材)