進化する東工大

未来へ向けて変わり続けるこれからの「教育」と「研究」

2018年3月に文部科学大臣から指定国立大学法人の指定を受け、さらなる教育の発展に取り組んでいる東工大。
日本の東工大から世界のTokyo Techへ。未来を見据えた人材育成やイノベーションを目指して新しくはじまった
4つの組織をご紹介。東工大の教育・研究は、今後もますます進化していきます。

未来社会DESIGN機構(DLab)

— 社会とともに「ちがう未来」を描く —
対象:高校生から一般の方まで

30年後の未来で「やりたい」こと「こうありたい」ことを一緒に考えよう

未来社会DESIGN機構長 佐藤勲
総括理事・副学長 理事・副学長(企画担当)

未来社会DESIGN機構長 佐藤勲

2018年9月に発足した未来社会DESIGN機構(以下、DLab)は、日本と世界のために東工大が持つリソースを活用して、社会とともに新しい何かを生み出す組織です。人々が望む未来社会とは何か。様々な捉え方があり、近年は未来予測も盛んに行われています。DLabは「豊かな未来社会を実現する方法を社会の皆さんと一緒に議論する場」。見通すのは30年~50年後の未来です。科学技術や人材が成熟するにはおよそ30年かかり、それらの養成を通して社会に貢献する大学として未来を議論することが必要です。

DLabは現在、3つのグループで構成されています。高校生~一般の方と学内メンバーとが一緒になって未来社会像を語り合う場を生み出す「Buzz Session」、学外有識者と本学教員等が豊かな未来社会を構想する「Team Imagine」、本学教員がその未来社会像の実現に向けたシナリオを描く「Team Create」。昨年10月のキックオフイベントには約130人が集まり「ボーダーを、超えよう。」というテーマのもとワークショップを行い、未来について語り合いました。そこで出た未来の種を拾ってTeam Imagineが豊かな未来社会のイメージを描き、それを実現する道筋を考えるTeam Createの議論へとつなげていきます。一連の活動でまず念頭に置いたのは「(こうある)べき論」をやめること。皆さんの「やりたい」「こうありたい」を実現するための方法を議論することが一番の特色です。

豊かな未来社会の想定と、それに向かう道筋を策定するには、他大学や企業、社会との連携が必要です。東工大生にとっても幅広い視点を持てる機会となり、望ましい未来社会を実現する研究に携わっていることが自覚できます。東工大生も高校生の方も今後開催されるワークショップなどを通じて、自由に意見を言っていただき、そ
れぞれが実現したい夢に向かって展開していく場にしたいと思っています。自分が大人になり社会を担う世代になる30年後に、どんな社会を実現したいかを私たちと一緒に考えてみませんか。

D-Labの構成図

これからも楽しいことが起こる ワクワクする大学であり続けてほしい

Team Imagineメンバー 杢野純子
株式会社円谷プロダクション執行役員 マーケティング本部エグゼクティブマネージャー 本学卒業生

Team Imagineメンバー 杢野純子氏

私がこれまで参画したことのある学校等の組織では、たいてい決まったテーマや方向性、結論が求められることが多くありました。今回Team Imagine参画のお話をいただいたときはそうした雰囲気が全くなくて、「もっと自由でいい」という考え方が新しいと感じました。30年後の未来をつくる大学になろうとしている中で、どんなことを考えていけばいいか。学外メンバーとして、できるだけ多くの視点、論点を提供できればと考えています。発足したばかりの現状は、具体的に期待されていることがまだ明確ではありません。「こんなことをやってくれそうだ」とDLabが期待されるようになることが第一歩。これをやるためのものと決まっていないところがこのDLabの根幹ではないでしょうか。

DLabの活動を活性化・加速するには、多くの人・企業・組織と関わって仲間を増やしていく必要があります。いろいろな才能をつなげることができれば、東工大の才能や知識も巻き込んで新しい化学反応が起きるんじゃないかと。このDLabだけで閉じるつもりはなく、東工大の"こんなことできちゃうんだ!"という面白さに、外からの刺激を掛け合わせて広い視点と具体的な手法とが活発に行き交う場を生み出していけたら面白いと思います。Buzz Sessionが中心となって行うワークショップなどで出た多様な意見を集約して「こうあるべき」と結論づけるのではなく、たとえば、いろいろな才能・背景を持つ5人が相応の熱量を持って"○○したい!"という気持ちで集まれば何かが本当に動き出す、そんな才能のぶつかり合いをDLabを通じてマーケティングしたいですね。

卒業生の私から見た東工大のイメージは真面目で誠実、本当はすごいのに地味に落ち着いている印象。そのすごさは社会からの信頼感につながっているのですが、もっと「ここに来たら、きっと楽しい! 何か大きなこと、世界中から集まった大きな才能に巡り会える! 30年後も50年後もワクワクする大学」だという期待を持たせ続ける大学であってほしい。そのための未来社会を考える活動ができたらいいなと思います

物質・情報卓越教育院

— 物質×情報のスペシャリストを育成する —
対象:大学院生

「東工大の博士」として世界に胸を張れる人材の創出を

物質・情報卓越教育院長 山口猛央
科学技術創成研究院 教授

物質・情報卓越教育院長 山口猛央

2019年1月に発足した物質・情報卓越教育院では、東工大が強みを持つ「物質」と「情報」の両方の視点を持ち、「社会」までを見据える知のスペシャリストを養成します。5年間の修士・博士一貫教育プログラムです。
なぜ、「物質×情報」なのか。たとえばリチウムイオン電池材料の市場規模は約1兆円ですが、スマホを含めたサービスになると約10兆円まで膨らみます。物質・情報卓越教育院では、日本が世界をリードする「ものつくり」の分野で、情報科学を使って社会のサービスまでつなげて考え、将来的な社会の中核となる新産業や新学問を創出する「複素人材」の育成を目指します。「複素人材」とは、物質(Real)と情報(Information)、さらに社会(Social)まで含めた複素空間を自在に行き来して活躍できる人材のこと。複数の素養という意味も込めています。ですから即戦力という考えはありません。20年~30年後に日本を変える、世界を変革する人を育てたいのです。

物質・情報卓越教育院が育成する4つの力

1.
物質と情報の両分野にまたがる複素的な新しい考え方を生み出す独創力
2.
大量の情報から正しく社会の課題を設定する俯瞰力
3.
原子・分子レベルから社会サービスまでスパイラル的に繋げ持続可能な社会に向けた課題を解決する実行力
4.
新サービスを世界に展開する国際リーダーシップ力

登録学生は、スーパーコンピュータTSUBAME等を有する東工大の物質・情報のリソースを駆使した教育や、世界的な研究者との連携、多様な企業の協力を得て実施する「プラクティス・スクール(教員と博士学生がチームとなり、同一企業に6週間滞在し、企業の最重要課題を解決するための提案を行う)」や海外インターンシップへの参加、経済的支援を受けられることも特長です。本プログラムは東工大の全学院で取り組むもので、メインは物質や情報を専門とする学生ですが、すべての大学院生が対象になります。

物質・情報卓越教育院は、社会を大きく動かしたいと思っている方を待っています。そのための広い視野と深い専門を持って成長できる環境があります。また、本プログラムを履修した学生は本当に優秀なんだと大学だけでなく連携企業の方にも理解いただき、博士として社会に出るときに好待遇される環境を作ります。海外で活躍するには博士号が必須となる時代に、世界をリードする「東工大の卓越した博士」という自分の姿を見据えて、大志をもって参加する方を待っています。

リーダーシップ教育院(ToTAL)

— 世界に羽ばたく才能を育てる —
対象:大学院生

これからの国際社会を牽引するリーダーシップを育む

リーダーシップ教育院(Tokyo Tech Academy for Leadership, ToTAL)は、2018年秋に始動した、修士・博士一貫のプログラムです。博士としての卓越した専門性に加え、学術分野の枠を超えて多様な人々を巻き込んで将来の国際社会を牽引するリーダーシップを備えた人材の育成を目指します。登録学生は、系・コースの専門教育と合わせて、ToTALが開講する「社会課題の認知」「グローバルコミュニケーション」「リーダーシップ・フォロワーシップ養成、合意形成」「オフキャンパスプロジェクト」「幅広い教養」の5つの科目群を受講しながら、仲間と共にリーダーシップ能力を磨きます。

ToTALでは、特定のリーダー像やスキルを学生に「教える」ことはしません。多様な背景を持つ学生達が共に学ぶ中で、一人一人が、自分ならではのリーダーシップを発見し、必要な能力を身に付けられるよう、挑戦しがいのある様々な機会と、学びあう場を提供します。

学修の指針として、以下の「ToTALで育みたいリーダーシップのタネ」を掲げています。

1.
歴史や世界の中で自己を認識し、内発的動機を見つけることができる
2.
自己と他者の違いを受け入れ、共に尊重し、よりよい社会のために協働できる
3.
常に挑戦する心を持ち、思った通りにならなくても、創造的に楽しむことができる

全学院から集まった第一期生は19名(うち9名が留学生)。専攻分野や国籍・文化的背景の異なる学生達が、政策立案、社会で活躍する若手リーダーを迎えてのワークショップ、読書会などの演習で切磋琢磨しています

リーダーシップ教育院の様子

リーダーシップ教育院の様子

基礎研究機構

— 研究・技術の若い力を伸ばす —
対象:若手研究者

世界のトップレベルで活躍する研究者の育成を目指す

大隅良典栄誉教授率いる細胞科学分野

2018年7月、若手研究者が自由な発想で新たな課題に挑戦する場として「基礎研究機構」が発足しました。東工大が最先端研究領域を開拓し、世界の研究ハブとしての地位を継続的に維持・発展させるためには、若手研究者・技術者の育成が重要です。そこで、基礎研究機構では、本学が世界をリードする最先端研究分野の傑出した研究者を塾長に迎えた「専門基礎研究塾」と、東工大の全分野の新任若手研究者が塾生として3か月間研鑽を行う「広域基礎研究塾」を立ち上げました。

専門基礎研究塾の「細胞科学分野」を率いるのはノーベル生理学・医学賞(2016年)を受賞した大隅良典栄誉教授。今年4月には、量子アニーリング理論の第一人者、西森秀稔教授が率いる「量子コンピューティング分野」も発足予定です。

基礎研究機構の取り組みを通して、優秀な若手人材に、若いうちに自由な発想のもと、新たな課題に挑戦する機会を提供し、将来の新しい産業の芽となるイノベーション創出につなげていきます。

Tech Tech ~テクテク~

本インタビューは東京工業大学のリアルを伝える情報誌「Tech Tech ~テクテク~ 35号(2019年3月)」に掲載されています。広報誌outerページから過去に発行されたTech Techをご覧いただけます。

(2018年取材)