東工大が取り組むダイバーシティ&インクルージョンとは?
東工大が全学をあげて注力するD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の取り組み。近年よく耳にする言葉ではありますが、背景や目的を深く理解している人は少ないかもしれません。D&Iを通じて東工大が目指すものとは何か。そして学内では具体的にどのような取り組みを行っているのか、ご紹介します。
一人一人の創造力を高め、イノベーションを起こしたいから
国際社会に通用する「Team 東工大」を目指して、「多様性を通じた創造」にあふれる学び場へ
桑田 薫 理事・副学長
(ダイバーシティ推進担当)
人材が集まる
解決し、多様な
人材が活躍できる
社会を実現する
新しい解決策が
生まれる
東工大が掲げるのは「創造のためのD&I」です。多様性のある環境は、異なる視点を持った他者との出会いをもたらします。そこで生まれる対話が、社会問題の新たな解決策を見いだす糸口となるでしょう。一人一人のアイデアが出会い、掛け合わされることによって本学の研究力を含む組織パフォーマンスをさらに高め、社会にイノベーションを起こすことを目指しています(上図「東工大D&Iサイクル」参照)。
D&Iが組織パフォーマンスを高めるという側面は、世界では研究が進み注目されているものの、国内での本格的な取り組みはこれからです。東工大は、こうした世界最先端のD&Iの考えを学内外へ浸透させていきます。
学内ではTeam 東工大として、D&Iへの共通認識の確立を重視します。新入生の必修科目「東工大立志プロジェクト」でもD&Iをテーマに盛り込むなど、問題を自分事として捉え、アンコンシャスバイアス※について学べる場を提供しています。もちろん学生だけでなく、教職員にも理解を深めてもらうためのアプローチを実施しています。
さらに今後は、Team 東工大全体で世界の大学との対話に臨みたいと考えています。これから本学に入学される皆さんに、真の意味で「世界レベル」の教育・研究・環境を提供できるよう、国際的な対話を通じたアップデートを重ねていく予定です。
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アンコンシャスバイアス…無意識のうちに持っている思い込みや偏見。
インターナショナルな環境
世界73ヵ国※から集う留学生
Hisao & Hiroko Taki Plazaで留学生との交流イベントが開催されるなど、学内では異文化コミュニケーションも活発です。また、留学生たちが英語で発信する「アンバサダーズ・ブログ」では、東工大のキャンパスライフの魅力がリアルな視点でつづられています。
※ 2023年5月1日時点
学食でハラルフードを提供
ハラル推奨メニューの提供条件や内容については、学内ムスリム団体「TTMC」(Tokyo Tech Muslim Community)と定期的に懇談会や試食会を実施し、日々アップデートしています。さらにフードショップでも、ハラル認証済み焼き立てパンや加工食品・菓子食品を販売しています。
東工大生協 ハラル推奨メニュー4つの約束
- 1.
- 鶏肉・牛肉を使用する際は、ハラル認証を受けた肉を使用する(※イスラム法にのっとった方法で加工処理された食肉)
- 2.
- 使用する食材の成分は全てチェックされている
- 3.
- 豚肉・アルコール、および豚由来の成分を含む調味料などは使用せず、ハラル認証済み調味料などを使用している
- 4.
- 調理工程において、ハラルでない食材とハラルの食材の混在がない
さまざまなライフステージのメンバーが活躍
仕事や学業・研究を「持続可能」に
出産・育児・介護・看護などのライフイベントで時間の確保が難しい学生・教職員に向けた支援体制を整えています。教育・研究・事務アシスタントを配置する制度の他、大岡山キャンパスには2017年に「てくてく保育園」が開設され、子育て中のメンバーを支えています。
多様な理系人材の育成
日本全体の課題「理系女性の少なさ」
STEM(科学・技術・工学・数学)分野進学者の女性割合を比較すると、日本は先進国中で最低のレベル※。しかし、複眼的視座が求められる企業の開発現場において理系女性人材は不可欠です。
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OECDによる「Education at a Glance 2021」に基づく
東工大の取り組み
東工大も例に漏れず、2022年時点で女性の学生・教員の比率はそれぞれ2割以下。そこで、Team 東工大の創造力を高めるべく2024年4月入学の学士課程入試から「女子枠」を導入します。
<従来の入試制度>
一般選抜(前期日程):930人
総合型選抜・学校推薦型選抜:98人
総合型選抜・学校推薦型選抜:98人
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<2025年度>
一般選抜(前期日程):784人※
女子枠143人
一般枠101人
総合型選抜・学校推薦型選抜:244人
(女子枠143人+一般枠101人)
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2025年度入学の入試では、「一般選抜(前期日程)・総合型選抜・学校推薦型選抜」3種類の入試のうち、後者2つの入試で合計143人の「女子枠」が設けられます。
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収容定員の増加を文部科学省に申請中(2023年8月時点)。募集人数が最大824人となる可能性があります。
アクセシビリティの向上
東工大の変革を加速させる「アクセシビリティリーダー」
バリアフリー支援室では障害のある学生・教職員へのサポートに加えて、全学生・教職員を対象に「アクセシビリティリーダー育成プログラム(ALP)」を実施しています。2022年度は合計30人が「2級アクセシビリティリーダー」の資格を取得しました。
東工大アクセシビリティマップの作成
「全ての学生・教職員が利用しやすい」をコンセプトに、障害のある学生とALPを受講した学生が協力し合い、キャンパスのマップ(案内サイト)を制作しました。言語・文化・環境・ジェンダー・年齢・障害等の違いがあっても理解しやすいよう、画像を多く入れ込んで、駅からの歩きやすい道順や各建物の施設の違いなどを紹介しています。制作にあたっては、たくさんの学生が学内を丹念に歩いて調査・撮影を行いました。
Student's Voice
西谷 樹さん
環境・社会理工学院 建築学系 学士課程3年
建築を学ぶ身として、全ての人が心地よく生活できる環境づくりについて知識と考えを深めたいと思い、ALPの受講を決意。合格できるか不安でしたが、プログラムがとても丁寧で、順調に進めることができました。アクセシビリティマップの制作では、それまで違和感なく使っていた施設・設備の「使いにくさ」に気が付きました。今後はALPでの学びを設計に活かしていくとともに、学修コンシェルジュJr.※広報班の活動を通じて学内での周知に取り組んでいきたいと思います。
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学修コンシェルジュJr.…学士課程初年次学生を主な対象に、学修支援を行う学生スタッフ。
本インタビューは東京工業大学のリアルを伝える情報誌「TechTech ~テクテク~ 43号(2023年9月)」に掲載されています。広報誌ページから過去に発行されたTechTechをご覧いただけます。