200年後の未来を、みんなで描く!
未来社会DESIGN機構「未来シナリオ」制作の裏側
2200年までの未来を考える。そんな大胆な試みを行っているのが未来社会DESIGN機構だ。
東工大らしく、ワクワクする未来を描いた「未来シナリオ」制作の裏側について、副機構長の大竹教授に伺った。
DLabとは
未来社会DESIGN機構(DLab)は、『人々が望む未来社会とは何か』を、社会の一員として考え、デザインすることを目的として2018年9月に設置されました。SDGsをはじめとしたあるべき未来の先にある、『ありたい未来』を若者や企業、公的機関の方々なども含めた多様な人々と一緒に考えています。
自由な発想は、若者の特権
「高校生に負けたと思う瞬間もあります」
誕生の裏側
豊かな発想から生まれた113もの「未来要素」
たくさんの議論を重ねて「未来シナリオ」というかたちに
大竹 尚登
科学技術創成研究院/副研究院長・教授
未来社会DESIGN機構(DLab)副機構長
指定国立大学法人の指定を受ける際、現代社会が抱える課題を解決するためのプランの策定が求められました。そこで出てきたのが「社会の声から研究にフィードバックして未来につなげる組織を構築する」というアイデアです。それが、現在の「未来社会DESIGN機構(DLab)」のベースとなっています。その後、プランを具体化するため数々のワークショップを開催してアイデアを募った結果、113もの「未来要素」が出てきました。膨大なアイデアをこの24の「未来シナリオ」にまとめるのは一苦労で、3~4ヵ月を費やしました。ときには、「妬みを感じない社会を作る」というテーマで、“妬み”の定義を問い直すなど議論が白熱したこともありましたね。「場所の束縛から解放される」や「コミュニティを自由に選び、つくれるようになる」といったシナリオでは、オンライン化の一方、人々が出会うコミュニティとしての機能も求められる大学の在り方をより一層考えました。
「未来シナリオ」には通底するテーマが潜んでいます。それらをつなぎ「未来社会像」を描く取り組みも行っています。2020年には、困難への挑戦を成長の原動力と捉えた「TRANSCHALLENGE社会」を発表しました。
ワクワクする秘密
「未来シナリオ」を現実に
ワクワクするような未来を描きたい
「未来シナリオ」の面白さは、調査研究に基づいた将来予測やこうあるべきという目標を定めたSDGsなどと異なり、「ありたい未来」つまり「予測ではなく、人々が望む未来社会」を描いたことにあります。DLabは、研究者や社会人だけでなく、高校生や大学生まで含めた自由な議論の場を設けていることも特徴です。モットーは“人の意見を否定せず、気づきに変えて議論を進める”こと。実際、高校生の自由で明るい発想がシナリオの構築に生かされ、明るく楽しい「未来への希望」が感じられるシナリオが並んでいます。
また「おうち完結生活」のように「未来シナリオ」の一部はすでにコロナ禍により前倒しで実現が進められている点も注目です。これは、危機に直面して自分事と捉えた時に、人類はようやく技術革新や行動を起こすということを示唆しています。つまり、このシナリオは現代の社会にすでに潜在している行動の「種」をわかりやすく可視化したものであるとも言えます。今後、「未来シナリオ」を多くの人が活用し、変革や行動につなげていただくことが私たちの理想です。
PICK UP!
大竹教授に聞く注目の未来シナリオ
2040
おうち完結生活
「オンライン化が進み、在宅ワークなども普及して郊外に住むといった動きがすでにありますね。それに伴いシナリオで予測しているような家族や政治の『在り方』に関する変化が、今後起きてくるのではないでしょうか」
2050
現在未開拓の空間資源(宇宙・地底など)を活用したエンターテインメントが作られる
「民間人の宇宙旅行など、少しずつ実現されてきています。アメリカや中国の宇宙研究も進んできていますね。宇宙旅行はエンターテインメントそのものですし、世界的に前倒しで研究が進んでいると思います」
本インタビューは東京工業大学のリアルを伝える情報誌「Tech Tech ~テクテク~ 40号(2022年3月)」に掲載されています。広報誌ページから過去に発行されたTech Techをご覧いただけます。
(2021年取材)