国際開発サークル(IDA)が取り組むプロジェクトの数は1つだったのが、ここ数年の間に大きく増え現在8つのプロジェクトが国内外で進行しています。また、サークルメンバーも20名に増え、設立当初は留学生がほとんどでしたが、今では日本人の学生もかなり増えました。
「留学生の募集は引き続き積極的に行っていますが、日本人のメンバーが約半数を占めることになったことで新規プロジェクトに着手できる機会が増えました」と話すのは、代表の石尾淳一郎さん(大学院理工学研究科国際開発工学専攻修士2年)です。
石尾さんに取り組んだプロジェクトについてお話を伺いました。「最近完了したプロジェクトのなかに、地域の小学生に非電化扇風機の作り方を教えるというものがありました。このプロジェクトは2011年の震災の際、多くの家庭が停電に見舞われたことをきっかけに生まれたものです。プロジェクトの実現には資金が必要ですが、国際開発サークルは東京都教育委員会の資金援助プログラムに応募し、プロジェクト費用(17万円)を獲得することに成功しました。」
当初、石尾さんらは全額を必要とするとは予想していなかったそうですが、実際には小学生でも作れるシンプルなつくりのペダル式扇風機をいろんな材料で繰り返し試作せねばならず、結果的には獲得したプロジェクト資金以上のコストがかかってしまったそうです。
副代表を務めるフィリピン出身のAlvin Varquezさん(大学院理工学研究科国際開発工学専攻博士課程1年)は、ケニアで行われているプロジェクトについて説明してくれました。「地元のグループが農業廃材を使ってより燃焼性の高い炭を作るための支援を行うものです。現在炭を作るために使用している結合剤(バインダー)は強度が弱く炭が崩れやすいため、地元の入手しやすい植物でよりバインダーに適した材料はないか探しているところです。」また、ベトナムの農村では、米からお酒を作る支援をしているそうです。「この地域ではお米が大変豊富です。その豊富にある作物を使って新規市場を開拓できればこの地域の新しい産業となり、そこに住む農村の人々の収入増加につながります。」とVarquezさんは話してくれました。
石尾さんは国際開発サークルで活動するメリットについてこう話します。「アイディアを実現するために、どう資金をあつめるか、どうチームを運営するか、IDAの活動を通して本当に多くのことを学びました。」そして、Varquezさんも続けます。「大学では研究のために多くの時間を研究室で過ごしますが、IDAは社会に出て直接人々の役立つプロジェクトを進めることによりアイディアを実現することが出来る場なのです。」
Tokyo Institute of Technology Bulletin No. 26 (2012年 5月)