イマを創る、先輩がいる — 三好洋美さん
生き物と向き合って新たな発見を
理化学研究所 光量子工学研究領域
先端工学素子開発チーム
三好洋美
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研究対象のひとつであるケラトサイトという細胞の顕微鏡写真
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溶液の色でpHを確認しながら実験用の細胞を管理する
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実験の手順や結果、気づいたことなどを必ずノートに書き留めるようにしている
- 上:研究対象のひとつであるケラトサイトという細胞の顕微鏡写真
- 中:溶液の色でpHを確認しながら実験用の細胞を管理する
- 下:実験の手順や結果、気づいたことなどを必ずノートに書き留めるようにしている
- みよし・ひろみ
- (愛媛県出身)
- 2000年
- 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 修士課程修了
民間企業に就職 - 2003年
- 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 博士課程入学
- 2006年
- 同研究科博士課程を修了し、NEDOに勤務
- 2007年
- 独立行政法人 理化学研究所で研究員を務める
2000年に大学院生命理工学研究科の修士課程を修了。
民間企業で働いた後、2003年に同博士課程に進学した三好洋美さん。
現在、理化学研究所で研究者として活躍しています。
「生きている」ことの “仕組み” を解明したい
—東工大に進学したきっかけや理由について教えてください。
「生きているとは、どういうことか」ということに中学、高校時代から興味がありました。ただ私の関心の的は、生物学的なものではなく、「その “仕組み” を物理の視点で解明したい」というものだったんです。そうしたなか、東工大の「生命理工学部」を見つけ、「ここならば」と進学を決めました。
—これまで、どのような研究をしてきたのですか。
「大学院時代には、アメーバの運動パターンやウニの卵の細胞分裂などについて研究していました。今も基本的にはその延長線上。細胞の形態や運動などに関する研究を行っています。例えば少し前には、化学物質などを使わずに細胞の移動をコントロールする方法を発見しました。がんが転移するメカニズムの解明ほか、将来的には病気の診断や治療への応用も期待される領域です。
「予想外」にこそ、新たな発見がある
—東工大時代の経験で、現在に活きていることはありますか。
「生き物と向き合いなさい」。浜口幸久先生のこの言葉が、今も研究活動の一番の支えです。生物や細胞が顕微鏡越しに見せてくれる反応は、ほんのささいなものに過ぎません。でも、「それに気づけるかどうか」がいかに大切かを学びました。例えば実験や観察というものは、ある程度結果を “予想” して行います。けれど重要なのはむしろ予想が裏切られたとき。そこに何らかのメッセージを感じ取ることが、新たな発見への第一歩なんです。だから、「予想と違うから、実験は失敗だ」─これではもったいないのです。後輩たちにも、「未熟でもいいから、ていねいに、慎重に」と言い続けています。
—「夢を叶えるために必要なもの」とは何だと思いますか。
自分の好きな事を見つけたら、やはりそれと “向き合う” ことだと思います。ときには回り道や行ったり来たりを強いられることがあるかもしれませんが、しっかりと見つめ続ける。よそ見をして、大切なものを見逃さないようにしてください。
(2013年取材)