イマを創る、先輩がいる — 大塚絵里さん
先が見えない状態でも、希望を持って研究しています。
第一三共株式会社
研究開発本部 探索第二研究所
第三グループ 専門研究員
大塚絵里
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実験で使う「マイクロピペッター」。ごく少量の薬液を量ったり、注入したりできます
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(左)不純物が一切なく、無菌状態の「超純水」。実験で溶液の希釈や、器具の洗浄に使用します
(右):DNAやタンパク質などの生体分子を電気泳動する際に使用する「TAE緩衝液」 -
一度に大量の化合物について薬の効果を確かめる際に使用する「96穴プレート」
- 上:実験で使う「マイクロピペッター」。ごく少量の薬液を量ったり、注入したりできます
- 中:(左)不純物が一切なく、無菌状態の「超純水」。実験で溶液の希釈や、器具の洗浄に使用します
- (右):DNAやタンパク質などの生体分子を電気泳動する際に使用する「TAE緩衝液」
- 下:一度に大量の化合物について薬の効果を確かめる際に使用する「96穴プレート」
- おおつか・えり
- (東京都出身)
- 1993年
- 東京工業大学 第7類 入学
- 1997年
- 生命理工学部 生体分子工学科 卒業
- 2002年
- 大学院生命理工学研究科
- バイオテクノロジー専攻 博士後期課程修了
- 同年から、三共株式会社
- (現第一三共株式会社)勤務
学生時代の研究を活かし、製薬会社で働く大塚さん。
今回は、研究のきっかけやお仕事についてお聞きしました。
骨の研究がライフワーク
—大学時代の研究について教えてください。
学部・大学院時代を通じて、骨粗しょう症の治療に関係する骨の細胞の研究をしていました。実は子どもの頃からリウマチの母の姿を見てきたので、入学前から薬の力で病気と闘うことができる「製薬」という分野に興味があったんです。骨を研究テーマに選んだのも、リウマチとなんらかの関係があるだろうと思ったから。学生時代は研究に打ち込みすぎて、夜遅くまで研究室に残ってしまうこともありましたね。
—現在の仕事について教えてください。
製薬会社で、学生時代と同じ「骨」をテーマに研究しています。就職を決めたのも、現在の職場が骨粗しょう症の治療薬開発に力を入れていると知ったから。私の所属する「探索」という部署は、何十万という化合物の中から、新薬に使えそうな有望な化合物=「タネ」を探すのが仕事です。これは、1つ薬を完成させるのに10 年かかると言われる創薬研究の中でも、最初の段階の研究。予想した結果が得られないことも多いですが「運がなかった」くらいに思って、意識的に気持ちを切り替えています。
研究職は結婚しても続けたい
—職場の雰囲気はどうですか?
研究者の集まりなので、やはり皆勉強熱心ですよ。直接関係のない研究をしている部署の研究者とも、月に一度くらいの割合で勉強会を開き、意見交換をしています。また、息抜きを兼ねて仕事帰りにお酒を飲んだり、休日にスキー旅行に出かけたりもします。和気あいあいとした雰囲気なので、とても働きやすいですね。研究職は転勤なども少ないので、結婚や出産を考える女性にも向いているんじゃないでしょうか。私も結婚しても続けたいと思っています。
—今後の目標はなんですか?
骨粗しょう症の新薬を開発することです。ほとんどの薬は既存の薬を基に改良を加えてつくります。「タネ」を発見し、新薬を完成させるのはとても稀なこと。毎日の仕事は地道な実験の連続ですが、希望を持って、科学の発展に貢献したいです。
—最後に、受験生に一言お願いします。
東工大は、存分に学べる環境が整っています。
ぜひ大学を活用して、皆さんの思う道を極めてください。
(2008年取材)