キャリアアドバイザーに聞く!東工大生の就職最前線
2022年を目途に、これまでの新卒一括採用(メンバーシップ型)から専門スキルを重視した通年採用(ジョブ型)へと移行していく採用事情。その最近の動向とともに、東工大の就職における特徴やキャリア支援についてキャリアアドバイザー守島利子特任教授にお聞きしました。
社会が求める人材、東工大が輩出する人材とは?
企業が東工大生に求めるものは理工系の高い専門性、そして論理的に深く考える力です。ジョブ型採用へ移行する時流は東工大生にとって追い風と言えるでしょう。「大事なことは何なのか」と物事の原理を考える思考のフレームワークは、修士課程や博士後期課程を経て身に付く東工大生の強みであり、大手企業への就職率の高さに表れています。
そんな雇用されうる能力=「employability※1の高さ」を標榜する東工大ではリーダーシップを発揮する人材の育成にも取り組み、学士課程1年目の授業「東工大立志プロジェクト」などを通じて自分の意見を伝える力も備わってきていると感じます。多様性やダイバーシティが求められるこれからの時代は、研究が社会にどう役に立つかまでを複眼的に見て考え、伝えていく力が求められます。研究や勉強だけでなく、留学生など文化の違う人と幅広くコミュニケーションを取って活動していくことが必要だと思いますね。
- ※1
- 本学の指定国立大学法人構想において、世界的なEmployability Rankingでトップ10に入る評価を獲得するなど、修了者の社会的評価を高めるよう、教育研究の卓越性を向上させることを到達目標2に掲げている。
先輩たちの就職率や主な就職先は?
「煙突の下に蔵前人あり」※2と謳われるように、昔からものづくりの現場には東工大生がいた歴史があります。日本の製造業全体に貢献するという志のもと、大手企業を志向する学生が東工大にはもともと多いですね。さらに博士号取得者は自分の研究と社会との親和性を考えられ、応用が利く柔軟性のある方。そういった人材を企業は求めています。アントレプレナーシップの育成やベンチャー支援も立ち上がっており、卒業して数年後や在学中に起業する方が出てきているのは頼もしいと感じます。同窓会の蔵前工業会が行うベンチャー相談室やOBの方が立ち上げたみらい創造機構では学生へのアドバイスも行っています。また海外就職の意識を持つ学生は学士課程の学生に多くなっているように感じます。海外企業はジョブ型採用が基本で、ヴルカヌスプログラム※3などの制度を利用してインターンを経験することが重要です。
- ※2
- 本学(当時は東京職工学校)は浅草蔵前の地に開校し、この地は工業技術教育発展のめざましい活動の舞台となり「煙突の下に蔵前人あり(煙突の立つ所には必ず蔵前の出身者あり)」と言われた。
- ※3
- 日欧産業協力センターによる、日本国籍の理工系学生を対象としたEU加盟国における企業研修システム。
2018年度卒業・修了生就職状況
東工大のキャリア支援とキャリア教育とは?
学生はまず所属研究室の先生、そして系・コースの就職担当の先生に相談して、専門分野以外のことはキャリアアドバイザールームで相談できます。さらに技術面接などの支援は蔵前工業会のアドバイザーにサポートしてもらえるなどキャリア支援は非常に手厚いです。蔵前工業会が主催するイベントは、去年のDr’s K-meet(博士向け)に82社が参加、今年のK-meet(全学生向け)には約300社が参加と、学生と企業が出会う一番の場になっています。また、東工大ではキャリア教育に力を入れ、文系教養科目と合わせ、学士課程1年生から修士・博士後期課程まで履修する仕組みは東工大ならでは。高度な理工系専門知識を習得し、それを社会貢献へと繋げられる人を育てる方針が特徴です。2016年の教育改革から芽が出はじめ、私が行っている「修士キャリアデザイン演習」という授業の中でもコミュニケーション力が上がっていると感じますね。
東工大生ならではのキャリアを考えるための科目を各課程ごとに提供しています。
本インタビューは東京工業大学のリアルを伝える情報誌「Tech Tech ~テクテク~ 36号(2019年9月)」に掲載されています。広報誌ページから過去に発行されたTech Techをご覧いただけます。
(2019年取材)
先輩からのエール
堆 仁美さん
AGC株式会社 商品開発研究所※
大学院理工学研究科 材料工学専攻
修士課程修了(2014年3月)
入社の決め手は会社の雰囲気。素材メーカーであることやNo.1の技術にも惹かれました。就職後に大事だと感じたのはチームの助け合いやコミュニケーション力。私が学生の頃はインターンより海外旅行をして視野を広げていましたね。進路決定で大切なのは情報を得ること。ベンチャーの起業や社会人ドクターなど多様な選択肢があると思います。 (2019年6月26日開催の進路ガイダンスより)