イマを創る、先輩がいる — 宮宗孝光さん

飛びぬけた成果を出すには、独自の発想が必要になる 株式会社ドリームインキュベータ執行役員 宮宗孝光

飛びぬけた成果を出すには、独自の発想が必要になる 株式会社ドリームインキュベータ執行役員 宮宗孝光

飛び抜けた成果を出すには、独自の発想が必要になる

株式会社ドリームインキュベータ

執行役員

宮宗孝光

東工大で学ぶなかで研究も人生も何事も人と違うところに答えがあると強く感じました 東工大で学ぶなかで研究も人生も何事も人と違うところに答えがあると強く感じました

  • 折に触れて読み返す、ドラッカーなどのマネジメントの名著。 折に触れて読み返す、ドラッカーなどのマネジメントの名著。

    折に触れて読み返す、ドラッカーなどのマネジメントの名著。

  • 仕事で使用するノートと万年筆。判型の大きいスプリングノート「ケンブリッジ」は、コンサルタントの間にも愛用者が多い。 仕事で使用するノートと万年筆。判型の大きいスプリングノート「ケンブリッジ」は、コンサルタントの間にも愛用者が多い。

    仕事で使用するノートと万年筆。判型の大きいスプリングノート「ケンブリッジ」は、コンサルタントの間にも愛用者が多い。

  • 多くの人に会う仕事だからこそ、身に着けるアイテムにも気を配る。お気に入りの名刺入れも、大切なビジネスツールのひとつ。 多くの人に会う仕事だからこそ、身に着けるアイテムにも気を配る。お気に入りの名刺入れも、大切なビジネスツールのひとつ。

    多くの人に会う仕事だからこそ、身に着けるアイテムにも気を配る。お気に入りの名刺入れも、大切なビジネスツールのひとつ。

  • 上:折に触れて読み返す、ドラッカーなどのマネジメントの名著。
  • 中:仕事で使用するノートと万年筆。判型の大きいスプリングノート「ケンブリッジ」は、コンサルタントの間にも愛用者が多い。
  • 下:多くの人に会う仕事だからこそ、身に着けるアイテムにも気を配る。お気に入りの名刺入れも、大切なビジネスツールのひとつ。

Profile

  • みやそう・たかみつ
  • (東京都出身)
  • 1993年
  • 東京工業大学 第2類 入学
  • 1996年
  • 飛び級により、同大学院 無機材料工学専攻に入学
  • 1998年
  • 同修士課程を修了
    シャープ株式会社入社
    4年目に同社を退社し、一時、システム系の会社に在籍
  • 2002年
  • 株式会社ドリームインキュベータ入社

東工大大学院で原子レベルの材料研究に打ち込み、就職した電機メーカーでは電子部品の量産化などを担当。その後「経営」に興味を持ち、コンサルティング会社に転職した宮宗孝光さん。理系出身のコンサルタントとして活躍する、現在までの歩みを聞きました。

chapter1:一念発起し進学校へ

電気系に興味を持ったのは、電子部品の商社を経営する父の影響です。小学生の頃から秋葉原に連れて行かれ、流行し始めたパソコンでプログラムを組んでいました。成績は中学校まで中くらいでしたが、塾に通い始めたのをきっかけに一念発起。私立海城高校(東京都)に入学しました。でも、それが苦労の始まりでもありましたね(笑)。

当然クラスメートは優秀な人ばかり。しかも半数は附属中学の出身で、中学卒業時には高校1年までの勉強を終わらせています。1年分の差を縮めようと、必死で勉強しました。今思い返すと、人が成長するのに「環境」がいかに大切か、よくわかります。

—実践的な学びを求め東工大へ

将来は、ものつくりに携わりたいと考えていたので、大学も、すべてのプロダクトの基礎となる「材料」か、材料の性質を変える機能を持つ「電気」関連の学科があるところを受験しました。なかでも入学時から細かく専門が分かれ、興味ある分野により早く到達できるイメージがあったのが東工大。工学では国内で屈指ですし、社会で生かせる実践的な勉強ができそうなところにも惹かれました。

chapter2:飛び級で大学院へ

東工大では期待通り早い時期から専門分野の学びを深めることができ、大学院では無機材料を研究するため鶴見敬章教授の研究室に入りました。テーマに選んだのは、原子レベルで材料開発を行う人工超格子。真空状態にした炉を使い、自然界にない順序で原子の層を並べるなどして、電気特性を飛躍的に上げる研究です。

実験は原子の種類や並べる順番などを変えて行いますが、それには炉の細かい調節が必要。精度を上げるため、手動だった調整を全自動で行えるよう、プログラムの作成と導入を行いました。教授から学んだことは、事実の捉え方や視座の持ち方、作業を効率良く“仕組み化”する方法などたくさんあります。加えて、自分の工夫で課題を解決していく環境を与えてもらい、本当に鍛えられました。

—「自分のやりたいこと」を追求

研究では、まず過去の論文を理解するのが原則です。材料の分野で東工大の研究者の論文が充実しているのには驚かされました。ただ、飛び抜けた成果を出すには、単なる過去の延長ではない独自の発想が必要になります。大学、大学院で学ぶなか、研究も人生も、“人とは違うところ”に答えがあると強く感じるようになりました。

著名人の講演などにも多く行きましたが、憧れるのはやはり周囲に流されず、やりたいことに生き生きと取り組んでいる人。実は私も大学3年から飛び級で大学院に進学し、周囲からは「急ぎすぎでは」と言われ、論文の書き方を独学するなど苦労もしました。それでも、「やりたいことをやるのが一番」という考えは今も変わりません。就職でも、自身の研究のテーマとは違いましたが、夢のある太陽光発電にかかわりたいと考えシャープに入りました。

オフにはアジア・欧米に足を運ぶことも。「多様な文化や価値観があることを知ると成長につながります。若い人にはぜひ海外に行ってほしいですね」と宮宗さん。

オフにはアジア・欧米に足を運ぶことも。「多様な文化や価値観があることを知ると成長につながります。若い人にはぜひ海外に行ってほしいですね」と宮宗さん。

chapter3:理系のセンスを生かしたコンサルタントに

しかしシャープでは、大学院で研究に使っていた真空装置を用いてDVD関連の部品を量産する担当に。がっかりもしましたが、3年間はとにかく仕事に打ち込み、4年目に退社を決心しました。そして、あらためて次にしたいことを考えたとき、やはり父の背中を見て育ったせいか、「経営」という言葉が頭に浮かんだんです。

ただその後、あるシステム会社の役員の方に誘われるまま転職するも、その人が2カ月後に退職……。自分の「人を見る目」のなさを嘆きたくなるような回り道も経験しました。そんなとき、本で偶然目にして興味を引かれたのが、企業の経営について外部から専門的な助言を行うコンサルティングの仕事です。一緒に働くことになる社内の人たちの魅力が決め手となり、ドリームインキュベータに入社しました。

—研究と経営には共通点がある

以来、経営コンサルタントとして、様々な企業の成長戦略づくりや海外展開、ベンチャー企業の上場支援などに携わって12年。当初は新しい世界に戸惑いもありましたが、「課題を発見し、工夫を重ね、解決の道を探る」というプロセスは、実は研究でも経営でも変わりません。東工大時代に身につけた、「大きな潮流の中で特異点、つまり従来の基準とは異なるポイントを見極め、その背景や条件を分析する」というアプローチは、今の仕事でもそのまま応用しています。

また、東工大で研究に使っていた真空装置について取引先に助言したり、シャープで行った仕事の知識を生かしてメーカーの支援をしたり、これまでの経験が様々な形で役に立っています。企業のコンサルティングを行っていると、技術は専門家任せという経営者の方も多いのですが、その技術の優位性が会社の未来を考えるのに欠かせないという場合は少なくありません。そうしたとき、理系の知識があり、他の人が気づかない点に気づけることが、コンサルタントとしての自分の強みになっていると感じます。振り返ってみると、紆余曲折、試行錯誤のキャリアが、不思議と今につながっているんです。

「これがやりたい」という素直な気持ちに従って、新しいことに次々と取り組めば、当然困難も生まれますし、失敗もあります。ただ、そこにまだ見ぬ金脈があるかもしれない。失敗を恐れていては、新たな発見はできません。これからも好奇心を持って挑戦を続け、自分の世界を広げていきたいと思っています。

(2014年取材)

お問い合わせ先

東京工業大学 総務部 広報課

Email : pr@jim.titech.ac.jp