東工大の実験
東工大生にとって、実験はかかせないもの。日々、さまざまな実験を行っています。
しかし、一概に実験といっても本当に多種多様。
特に、2年生以降の実験はどれも個性にあふれ、物理や、化学、生物の実験から、土木、機械、そしてプログラミングの実験もあります!
大学での実験は、高校までのそれとは一味も二味も違っている?
今回は、そんな大学ならではの実験の中で、学士課程2、3年目に行うものの一部を、学院別に紹介します。
一体どのようなことが行われているのか、東工大での実験の様子を少しだけ見てみましょう!
理学院 物理学系
物理学実験第二 原子核の半径を求める
理学院 物理学系の「物理学実験第二」という授業では、週に2回の実験で、素粒子物理学や数理学、電磁気学など様々な分野を学びます。そのために、先生やペアになった学生とディスカッションしたり図書館で本を探したりして、知見を深めていきます。物理好きにはたまらなく楽しい環境ですよ。写真の実験では、ラザフォードの実験に従い、アルファ粒子を金・アルミニウムの薄膜にぶつけ、まれに大きな散乱が起きることを確認します。さらに、ガイガー・ヌッタルの法則を用いて実際に原子核の半径を求めます。それにより、原子核の大きさが原子に比べてとても小さいことも示しました。物理系というと座学のみと思われるかもしれませんが実際に実験をして、それまで座学で学んでいた法則や現象を実際に実験を通して理解することができるので、とても面白いです。
実験あるある
- レポートが終わらなくて徹夜することも。
- 実験ペアと仲良くなれる。
工学院 機械系
機械系基礎実験 振り子の考察
工学院 機械系の授業では、選択必修科目として「機械系基礎実験」という科目が用意されています。この授業で行う機械力学の実験では、1自由度系の減衰自由振動、2自由度系の自由振動の実験を単振り子と2重振り子を用いて行います。機械系の必修科目である「機械力学」という授業で、すでにこれらの理論を学んでおり、実験を通してその理論を実際に確かめることができます。予習では、演習問題を解き、実験手順をよく読みます。実験当日は、数人1組のグループに分かれて実験を行います。準備では、振り子の角変位を計測するための装置を接続します。その後、振り子を振って計測し、データをパソコンに保存します。パソコンに保存した振動データから、MATLABという数値計算ソフトを用いて解析し、減衰比や固有振動数などの物理量を算出します。実験終了後、手順や結果、考察などをまとめたレポート課題が課されます。レポートの作成は、実験の授業で最も大変ですが、正しいレポートの書き方などが習得できます。
物質理工学院 応用化学系
応用化学実験専門 合成物を作る
物質理工学院 応用化学系の「応用化学実験専門」の授業では、週に2回実験を行っています。内容は有機と無機が学期ごとに変わるので、いろいろな知識を身に付けることができます。普段の実験では予習として、使う試薬の特性(分子量、沸点融点、溶解度など)を調べ、毎回実験ノートを書いてから実験に臨みます。一つのテーマで2週間~4週間の間実験を行うので、一つの実験でのミスは命とりです。一回の実験にかかる時間は約3時間で、長いときは6時間ほどかかるときもあります。レポートは、一つのテーマに対して約20~25枚と多いので、徹夜をして仕上げることもあります。写真は、無機の実験です。トルエンとメタノールを反応させて合成物を作るときに、どうすれば希望の合成物ができるのか試行錯誤しながら実験を進めていきます。
実験あるある
- 毎回白衣を着ると思われがちだが、劇薬を使っていないときは白衣を着ないこともある。
- 白衣が溶液によって、さまざまな色に染まっている。
情報理工学院 情報工学系
オブジェクト指向プログラミング 計算機で実習
情報理工学院 情報工学系では、プログラミングの基本的な考え方や原理となる計算メカニズムの演習を行っています。「オブジェクト指向プログラミング」という授業では、階層化されたクラス定義による抽象化とプログラミング技法を利用する能力を身に付けます。演習毎に前回の内容の問題を解き、一人で、またはグループで話し合って問題に取り組み、内容を演習の時間内にまとめます。また、関数型プログラミングでプログラミングの構造について議論したり、無限ストリームと再起を利用したフィボナッチ数列の作成をしたりとさまざまな演習を行います。また、大学院に進むと情報理工学院の実験・演習で東工大のスーパーコンピュータTSUBAMEを利用する点は東工大らしいと言えるでしょう。
実験あるある
- 時間内に問題を解かなければいけないので、授業中の集中力が半端ない。
- 難しい内容の実験レポートは締め切りぎりぎりまでかかってしまうので徹夜をすることも。
生命理工学院 生命理工学系
生命工学総合実験第二 タンパク質を解析する
生命理工学院では、週に2回の実験を行っています。有機化学、生物化学、分子生物学、物理化学の4分野を、それぞれ1クォーターずつかけて行います。生命理工学院と聞くと、生物以外のことはやっていないと思われがちですが、有機化学や物理化学なども生物をやる上では欠かせない分野です。そのため、さまざまな分野の実験をすることができるのが生命理工学院の良いところです。1~3回の実験ごとにレポート課題が出されるためレポートの数は多いですが、1回当たりの分量はそこまで多くはない(?)ため、計画的に取り組めば終わらないことはないですよ!写真は生物化学の実験の様子です。タンパク質の機能を明らかにするために、タンパク質の解析を3回かけて行います。これは第1回の様子で、植物細胞としてもやしとカイワレを用いて、タンパク質の抽出、分離、定量をしています。ここで抽出したタンパク質を次回の実験で使うため、今回の実験が次回以降の結果に影響してきます。植物や動物を実験に用いるのは、生命理工学院ならではと言えるかもしれません。
環境・社会理工学院 土木・環境工学系
構造力学・水理学実験第一 作った橋を競う
環境・社会理工学院 土木・環境工学系では週1回、実験を行っています。ブリッジコンペティションという実験では一班7、8人に分かれて、班ごとに指示された通りに橋を設計し、作った橋を競い合います。まず設計通りに木材・接着剤を使って橋を作ります。その際、釘などの金属は一切使えません。さらに、製作は授業外に行うのでとても大変です。最終的には、作った橋がどのくらいの強度があるのかを確かめ、班ごとに競い合います。橋に10キロの重りをかけた時の変形の度合い、橋の美観、いかに橋が軽いか、この3点が評価されます。
実験あるある
- 毎回の実験前後に口述試験があり、予習が大変。
- レポートの提出が班ごと。全員の協力が必要不可欠。
※学生企画は学生広報サポーターによる自主企画ページです。
本インタビューは東京工業大学のリアルを伝える情報誌「Tech Tech ~テクテク~ 33号(2018年3月)」に掲載されています。広報誌ページから過去に発行されたTech Techをご覧いただけます。
(2018年取材)