原子力をクリーンなエネルギーとして実用化

原子力をクリーンなエネルギーとして実用化 株式会社NuSAC

私がリポートしました 中山 宗典さん 理工学研究科 集積システム専攻 修士2年(取材当時)父親がベンチャー企業を起こしたこともあり、起業に興味を持つ

東京工業大学 藤井靖彦 名誉教授

東京工業大学

藤井靖彦 名誉教授

21世紀の環境保全のため、東工大で培われたウラン濃縮の技術をもとにクリーンな原子力エネルギーの実用化を目指す。東工大の藤井靖彦名誉教授も発起人の一人として在籍。

原子力にかかわる異色のベンチャー企業NuSACについて、代表取締役の常磐井守泰さん、取締役の藤井靖彦名誉教授、江尻智行さんの3人にお話をうかがいました。

21世紀の地球のための原子力

  • 中山(以下、中)― まず、事業の内容を教えてください。

  • 藤井さん(以下、藤)― NuSACとは、ニュークリア・ソリューション・アカデミーという我々の理念を表しています。我々の目指すところは、東工大で培ってきたいろいろな技術を使って、原子力をクリーンなエネルギーとして実用化できるよう、アシスタント業をやろうということです。

  • ― 原子力というと、兵器利用されたりと、やはり危険なイメージがあるのですが。

  • ― 個人的な見方ですが、原子力は50年生まれるのが早すぎたように感じています。第二次世界大戦時に生まれたので兵器として使われましたが、二酸化炭素削減などは原子力を抜きには語れません。皆さんには原子力を「これからのエネルギー」と理解してもらいたいと思っています。そして原子力を21世紀の地球のために使おうというのが弊社の目標です。具体的には、現在、山から採取されているウランを、海から採取できるよう濃縮技術を実用化させることです。海水からウランが採取できれば、島国の日本は恵まれた環境になるといえるでしょう。そして、核兵器をつくれないウランの濃縮法を広めることで、世界中で安全にエネルギーが採取できるようになれば、東工大発の技術をもって、世界に貢献ができたといえるのではないかと考えています。

  • ― ベンチャー企業として、スポンサーなど、事業をどのように展開されているのですか?

  • 常磐井さん(以下、常)― スポンサーがあって誰かの下でやるのではなく、我々しかできないことを我々が先にやる、それに賛同していただければ資金も集まるのではないか、と思っています。先にお金があって何かを始めたわけではなく、始めることに意義がある、というのが私たちの考えです。

時代が追いついた技術

  • ― ベンチャーというと、身軽なところがメリットだと思いますが、その特性とは逆に扱われている原子力は、国などもっと大きなものを巻き込んで開発するものかと思っていました。

  • ― 確かに原子力の分野は、国など大きな組織が関与しないとどうにもならないことが多くありますね。しかも、政策決定にものすごく時間がかかります。でも、我々はベンチャーという、社会的に自由な立場なので、すぐに方向性を決めて、関心のある人や技術を集めて動くことができます。

左から藤井さん、常磐井さん、江尻さん

左から藤井さん、常磐井さん、江尻さん

  • ― 起業のきっかけは何だったのですか?

  • ― かつて注目されていたのに結果として実用化できなかった、すごい技術を掘り起こしてみようと思いついたのが発端です。

  • 江尻さん― 大学の研究とビジネスの関係は、常に最先端のものが注目されますが、基礎的な部分は確立したものの、実用化されていないものはまだまだあると考えています。

  • ― 過去に時代にマッチしなかった技術を、今の時代にマッチするように組み立てて、次の世代につなぐ。そんなベンチャーがあってもいいと思ってやっています。そして出会ったのがウラン濃縮化学法です。30数年前、藤井先生の恩師である垣花秀武先生が、原子力発電には使えるが、兵器用のウランはつくれない濃縮方法を提案されていた。なのでこれは新しいアイデアではないんです。でも、時代が変わったから結果的にものすごく新しくなった。

  • ― 起業を考えている学生に向けてアドバイスをいただけますか?

  • ― ベンチャーは定義があるわけではないと思います。やりたいことを人に伝えると、必ず共鳴してくれる人が出てくるはずです。私たちのようなおじさん達が、「役に立てばいい」と利益は二の次でやる(笑)、そんなベンチャーもあるんですから。

  • ― ありがとうございました。また何年後かに追跡取材にうかがいたいです。

リポートを終えて 技術を埋もれさせてはいけないという信念に感動しました。起業に対する想いがさらに大きくなりました。

(2010年取材)