留学経験者編

留学制度も充実している東工大。

アメリカ、ドイツ、中国で学んだ3人に現地での活動、帰国後の思いなどを聞きました。

滝沢和宏さん

今飯田佳代子さん

中野和彦さん

アメリカ留学における成果も盛り込んで、論文を書き上げた。

アメリカ留学における成果も盛り込んで、論文を書き上げた

現地で訪れた美術館のチケットなど

現地で訪れた美術館のチケットなど

寮での誕生日パーティーの記念写真

寮での誕生日パーティーの記念写真

中国人の友人たちと一緒にやったバスケット。

中国人の友人たちと一緒にやったバスケット。

万里の長城にも観光へ

万里の長城にも観光へ

大学院理工学研究科
物質科学専攻
博士後期課程2年(取材当時)

滝沢和宏 さん

Takizawa Kazuhiro

安定した環境で研究に集中するなか、新たな刺激を得られる機会を探していた。留学先では、東工大の研究室の良さも再認識でき、帰国後、新鮮な気持ちで研究に取り組んでいる。

留学先:ミネソタ大学(アメリカ合衆国)
期間:2012年7月~(約3ヵ月間)

大学院総合理工学研究科
人間環境システム専攻
修士課程2年(取材当時)

今飯田佳代子 さん

Imaiida Kayoko

東工大のドイツ語会話のクラスで、先輩から留学の魅力を聞き興味を持つ。ドイツのほか、周辺のスイスやフランス、オーストリアなどを訪ねて、有名な建築物も見て回った。

留学先:シュツッツガルト大学(ドイツ)
期間:2011年9月~(約1年間)

大学院生命理工学研究科
生物プロセス専攻
修士課程2年(取材当時)

中野和彦 さん

Nakano Kazuhiko

日常とは異なる雰囲気を体験するのが好きで、学部生の頃もよく海外旅行をした。海外で生活し、日本との違いを経験してから就職しようと思ったのが留学のきっかけ。

留学先:清華大学(中国)
期間:2011年8月~(約1年間)

留学先の国や学校を選んだ理由は?

中野さん(以下、中野):中国は2010年にGDPが世界第2位になりましたよね。科学技術の面でも発展が著しく、論文の発表数でも日本を追い越しています。最近、その質も上がってきたと聞き、大学教育の現場をこの目で見てみたいと思ったのが中国行きを決めた理由です。僕が利用したプログラムは、留学先の清華大学と東工大、両方の学位が貰えるというのも魅力でした。

今飯田さん(以下、今飯田):私も東工大の派遣交換留学プログラムで、1年間ドイツで勉強してきました。留学の期間中に、ヨーロッパのいろいろな国を訪ねたいという思いもあり、各国へのアクセスもいいドイツへ。比較的治安がいいことも、決め手になりましたね。

滝沢さん(以下、滝沢):僕は、短期留学の制度でアメリカに行きました。東工大と提携している大学は、イギリスやドイツ、フランスなどにもありましたが、自分が専門としている高分子物理の研究をするには、ミネソタ大学が一番適していたんです。

どんな勉強、研究をしてきたの?

中野:週に3コマほど授業も取っていましたが、主には研究室に所属し、実験に取り組んでいました。具体的には、ウイルスを使った工場排水や生活用水の浄化方法の研究。遺伝子操作を行って特別な機能を持ったウイルスをつくっていくという実験です。

滝沢:僕も、研究活動に没頭していましたね。テーマは、太陽電池や携帯電話など、様々な分野で使われるプラスチックフィルムの基礎的な研究です。基本的には日本でやっていたことを継続して行っていましたが、知り合いのいない環境で、ゼロから自分で計画を立てて活動できたことは、いい経験だったと思います。ある意味で、初心に帰ることができました。

今飯田:二人とは違って、私は授業中心。都市計画関連の授業を多く取りました。ほとんどの授業はドイツ語なので諦めたものもありましたが、プレゼンの多い授業にも前向きに挑戦しました。面白かったのは、世界の大学のキャンパスを調べて発表する授業。各自が1大学ずつ担当し、現状把握から設計意図、変遷などを4回にわたってプレゼンするというものです。リサーチは大変だし、言葉の壁もあって結構ハードでしたが、留学したからこその経験だったと思います。また授業では、「アジア人は予習に熱心」「ヨーロッパ人は授業中よく質問する」など、国による違いも目の当たりにできて興味深かったですね(笑)。

留学ってどうやったらできるの?

海外の大学58校と学生交流協定を結んでいる東工大。留学プログラムも、短期、長期、派遣交換など多彩だ。応募にあたっては、成績証明書のほか、語学試験スコアシートや教授の推薦状が必要になることも。実際にどのようなプロセスを経て、海外への留学が決まるのか─。東工大の「派遣交換留学プログラム」を例にとって、その流れをご紹介。
  • Step 1

    応募書類の提出

    願書、人物評価書、語学試験の成績証明書など

  • Step 2

    学内選考

    語学筆記試験(独・仏)、書類選考、面接

  • Step 3

    留学希望大学へ推薦

    学内選考合格者を推薦、出願書類の提出

  • Step 4

    審査

    留学希望大学による審査、受入決定後に各種手続き

  • Step 5

    留学

    派遣先大学で授業の履修や、研究を行う

帰国後も続いている現地でできた友人との交流

勉強以外での思い出は?

滝沢:週末は研究室のメンバーと一緒に、よく遊びに出かけました。ミネソタ州のフェスティバル、知り合いのライブ、地元のソーラーカーレース……。どれも楽しかった。あと、僕は大学から自転車で30分のところにホームステイしていたので、毎日ミシシッピ川沿いの美しい景色を眺めながら通学していました。

今飯田:本当に「アメリカならでは」という感じですね。ドイツにも良いところはたくさんあって、個人的にお気に入りだったのが州立美術館です。美術や建築を専攻している学生は1ユーロで入館できたので、気分転換したいときなんかにふらっと訪れていました。それと留学生同士では、パーティーもよくしましたね。お店ではなく、誰かの寮に集まって、みんなで料理を作ったり、食べ物を持ち寄ったり。日本ではあまりそういう機会もなかったので良い経験でした。おかげで友達の輪も広がり、何人かとは帰国後もSNSなどで連絡を取り合っています。

中野:僕の場合も、学生同士の交流がやっぱり印象に残っています。清華大学は中国トップクラスの学校なので、本当に世界中から留学生がやってくるんです。寮の学生だけでも、韓国人、アメリカ人、ケニア人などなど、バラエティーに富んでいました。校内のコートでアメリカ人や中国人とバスケットをしたり、何気ないことだけど日本ではなかなかできないことですよね。

※1ユーロ=約125円(2013年2月時点)

東工大生の留学先ベスト5 —2011年度—

東工大生の留学先ベスト5 —2011年度—

東工大生に人気の留学先は右のとおり。ほかに、スウェーデンや韓国、台湾、ドイツ、オーストラリアなども上位にランクされた。「語学力の強化を考えて」「その国の文化に興味があった」「教育水準の高さが決め手」「大学の周辺環境を重視した」など、留学先を選んだ理由は人それぞれだ。

外国の環境や考え方に触れて日本の魅力を再認識できた

留学を通じて得たこと、感じたことは?

滝沢:ひとつには、日本での研究環境がとても恵まれたものであったことを再認識しました。東工大では、測定装置を使うにしても、きちんと予約しておけばストレスなく、自由に使うことができます。でも考えてみれば、すべての大学がそのような環境を用意しているわけではないんだなと。海外に行って初めて、そうしたことを実感できました。

今飯田:確かに、外国で過ごすと日本を客観的に見られるようになりますね。例えば、ドイツ人は仕事とプライベートをしっかり分けていて、バカンスで2、3週間は当たり前に休みます。私自身、それはそれで魅力的だなと思うけど、彼らの基本にあるのは個人主義です。それが理解できると、日本人の周囲への気配りとか思いやりのすばらしさも見えてきます。どちらが良い悪いではなく、海外と日本を相対化して、冷静な目で見られるようになったのは大きな収穫です。

中野:本当にそうですね。僕も、日本人の細やかさ、丁寧さといったものを帰国後に実感しています。実験器具ひとつをとっても、日本のものはとても質が高いんです。その一方で、中国についてはやっぱり国としての勢いも感じました。印象的なのは、清華大学の先生が「科学技術の発展が国力になる」と繰り返し言っていたこと。日本では、そういう感覚は薄れていますよね。でも、振り返ってみれば、まさに日本は科学技術を国力につなげてきた国。中国の熱気を肌で感じ、自分も日本でできることはないかなと考えるようになりました。

将来の夢や目標を聞かせて。

中野:やはり科学技術を活かしていくような仕事に就ければと思います。もちろん民間企業の研究職という道もありますが、例えば省庁などに入ってもう少し広い観点から仕事をする選択肢もあるかなと考えています。

今飯田:まだ漠然としたところもありますが、何かものつくりに携わる仕事をしたいと思っています。留学したおかげで、「世界の中にある日本」という視点が得られたので、それを何かしらの形で活かしていきたいです。

滝沢:アメリカは、産業界と大学の結びつきが強い国。大学でも、ビジネスと深くかかわる研究をしています。もともと将来は、企業に就職して研究を続けたいと考えていましたが、留学を経験し、その思いがより強くなりました。現在研究しているプラスチックフィルムの分野に限らず、総合的な材料開発のプロフェッショナルになることが目標です。

みなさん、ありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。

(2012年取材)