イマを創る、先輩がいる

誰もしたことのない挑戦―。保証はない代わりに、自由があります。白山工業株式会社 代表取締役社長 吉田稔

技術革新を続けるものつくり企業で、社長を務める吉田さん。
学生時代に培われたフロンティア精神は、今も健在。

大切なことは山から教わった

―学生時代、何に夢中になりましたか?

ワンダーフォーゲル部と山岳部に所属し、誰も見たことのない景色が見たくて、登山ばかりしていました。そこからフィールドワークを中心とする自然科学研究の楽しさを知り、大学院からは雪氷学に転向。ヒマラヤなどで研究を進め、卒業後は越冬隊員として南極の氷床研究に携わりました。南極は、皆さんの想像以上に閉ざされた環境。夏は300km離れた昭和基地とも雪上車で行き来できますが、冬はまったく動けなくなってしまうんです。そんな環境に少人数で置かれるので、唯一の楽しみである食事だけは、下手でも丁寧に作ったり、一度聞いた話でもはじめて聞くように驚いてみたり(笑)。仲間との結束を維持するために地道な努力をしましたね。

ものつくりの世界を開拓する

―社長を務める白山工業について教えてください。

当初は、金属コイル材料を帯状に切断するための、スリッターシステムを作る町工場でした。現在は、地震防災システム、衛星通信システムの製造販売を行い、それぞれ日本のトップシェアを持っています。仕事の醍醐味は、まだ手付かずの分野で技術を開発し、自分で市場を開拓していけること。新参者の中小企業が大企業に勝つには、技術革新しかありませんから。そんな白山工業で私が最初に作ったのは、電源のない屋外で長期間の温度データを自動収集できる計測器。実は、自分が研究者時代に欲しかった物なんです。この製品はその後、同じニーズを持つ研究者の目に留まりました。

―今後の目標を教えてください。

培ってきた技術を社会に還元していくことです。たとえば2007年からはじまった「緊急地震速報」には、白山工業も地震情報の配信システムを提供しています。現在、さらに確かな情報システムを作り上げるため、社全体で取り組んでいる最中。世界で一番の技術に挑戦したい、という人がいれば、白山工業では大歓迎です。

―最後に、受験生に一言お願いします。

東工大は一生続く仲間に出会える場所。
私は、今でも大学時代の仲間との交流の場を持っています。

前人未踏のものつくりを楽しむ

  • 緊急地震速報の画面
  • エベレストにて氷河のボーリング調査をしている時の吉田さん
  • 通信回線のない僻地での衛星通信を可能にする「SCADA用可搬型VSATシステム」と金属加工のためのスリッター
  • 上:緊急地震速報の画面
  • 中:エベレストにて氷河のボーリング調査をしている時の吉田さん
  • 下左:通信回線のない僻地での衛星通信を可能にする「SCADA用可搬型VSATシステム」
  • 下右:金属加工のためのスリッター

Profile

  • よしだ・みのる
  • (東京都出身)
  • 1972年
  • 東京工業大学第4類入学
  • 1976年
  • 工学部機械物理工学科卒業
  • 1983年
  • 名古屋大学大学院理学研究科
  • 大気水圏科学専攻博士課程単位取得退学
  • 1983年
  • 国立極地研究所勤務
  • 1986年
  • 白山工業株式会社を設立
  • 代表取締役社長に就任

(2008年取材)