東工大の研究で変わる、わたしたちの「暮らし」

東工大の研究で変わる、わたしたちの「暮らし」

東工大で行われている研究の数々は、やがて研究室を飛び出し、暮らしと密接にかかわる技術となって社会に変化をもたらします。
それはまるで、アニメやSF小説で見た「未来の暮らし」!?
実用化が期待される研究の一例を紹介します。

日本の道路が世界でいちばんスムーズになる! ?

日本の道路が世界でいちばんスムーズになる! ?

首都高速道路で1日に発生する事故数は約35件。それによって引き起こされる交通渋滞や遅延が暮らしに与える影響は大きい。こうした問題を解決するために注目されているのが、環境・社会理工学院 土木・環境工学系の朝倉教授が進めている「交通ネットワーク上でのヒトやクルマの動き」の研究だ。過去の事故発生データはもちろん、GPSや携帯電話などの移動体通信機器やWebを用いてヒトの交通行動や自動車の流れを解析。危険や渋滞の発生を予測可能にし、よりスムーズな交通インフラの整備に役立てるのだ。レジャーシーズンに交通渋滞はつきものだが、将来は渋滞を気にせず安全かつスムーズに旅行を楽しめるようになるかもしれない。

ロボットが荷物運びをしてくれる!

「歩く人の後を追ってついてくるロボット」。現代の技術なら簡単に実現できそうに思えるが、人の歩行速度や角を曲がるときの動きをリアルタイムで測るには数十万円もの装置が必要でなかなか実用化されてこなかった。そこに突破口を見出したのが、工学院 機械系の鈴森・遠藤研究室だ。ロボットを紐でつなぎ、その紐の長さと向きをセンサーで感知し、自動で向きと速度を変えて人の後ろをついていく仕組みを考案。常に酸素ボンベを運ばねばならない患者さん向けに公道で実証実験が行われており、3年以内に15万円以下での実用化を目指している。

職人不足をロボットが救う!?

職人不足をロボットが救う! ?

科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の長谷川研究室が開発する人工脳SOINNは、人の脳に最も近いAIといえるだろう。情報処理をプログラムされた従来のロボットとは異なり、アルゴリズムにより人工脳自身が「勝手に」学習し、まるで子どもが学習するように成長していく。例えばドローン操縦のお手本を5分間与えるだけで、自分で操作できるようになるのだ。2014年、長谷川准教授はSOINNを活用したサービスを提供する会社を起業。ビジネス現場での複雑なデータ処理から一般向けの家計簿アプリまで、幅広く実用化され始めている。またSOINNは、機械化が難しいベテラン職人の技を学習させることもできる。IT業界のみならず、後継者不足に悩む伝統工芸分野においても救世主となるかもしれない。

コンピューターの計算速度はまだまだ進化?

コンピューターの計算速度はまだまだ進化?

ビックデータの計算処理には超高性能なスーパーコンピューターの活躍が期待されるが、時代はさらにその先を歩み始めている。理学院 物理学系の西森教授らが研究する「量子アニーリング理論」を用いた、新たなコンピューターが登場したのだ。このモデルは、条件を満たす組み合わせ集合の中からもっともよい組み合わせを探す「組み合わせ最適化問題」を解く手法のひとつで、計算処理時間を大幅に短縮できる。2014年にはGoogleも「量子コンピューター」のハード開発着手を発表。従来のコンピューターでは解けない問題を、数年後には量子コンピューターが瞬時に解決するかもしれない。

私たちの身体そのものが「発電所」! ?

私たちの身体そのものが「発電所」! ?

ペースメーカーや人工内耳などの埋込み型医療デバイスには、定期的な電池交換手術による患者の身体負担やバッテリー残量への不安がつきものだ。その問題を解決するため、工学院 機械系の土方准教授が研究を進めているのが「体内発電システム」。体内で筋肉に電気刺激を与えて収縮させ、その力を電気エネルギーに変換して機械を動かすのだ。医療デバイスはもちろん、将来実用化が見込まれる健康モニタリング装置や人工網膜などへの活用も期待されている。

「匂い」をたのしむ映画が登場! ?

夕食時に近所の家から漂ってくる生姜焼きの香りに、思わずお腹が鳴ったことはないだろうか。嗅覚は五感の中でも情動的な反応を引き起こすと言われているが、科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の中本研究室ではこの「匂い」を自動で調合し発生させる「香り調合発生装置」の開発が進められている。32種類の匂いの元をベースに、操作に応じてコンピューターが匂いを調合し発生させるのだ。ゲームをはじめとするアミューズメントやレストランのディスプレイ、医療検査など、幅広い分野での応用が考えられている。3D映画の次に来るのは、「香る」映画ブームかも!?

(2015年取材)

(所属等は2016年10月時点のものを掲載しています。)